おとつい、シドニーの友人あゆみさんと「The Unknown Dancer in the Neighbourhood」(日本名タイトル:となり街の知らない踊り子)を観てきました!
日本のプロダンサーで振付師のWataru Kitaoさんと、演出家で脚本家のSuguru Yamamotoさんのコラボ作品でした。Japan Foundation Sydneyから招聘されて、シドニーで上演となったようです。
この作品のことを知ったきっかけ
Japan Foundation Sydneyのメルマガでお知らせが来ました。正直言うと、この写真を観た時は、全然ピンと来なかったの。めちゃめちゃ失礼やけど、あまり期待してなかったの(ご、ごめんなさい!!!汗汗汗)。
Japan Foundation Sydneyが、これまで招聘してきたアーティストは伝統的な能面を作る職人さんだったり、伝統的な手ぬぐいを作る作家さんだったりだったので、「こんな日本のコンテンポラリーなダンサーも招聘するんだー!」と、ちょっと驚いて、興味半分でチケットを予約しました。
不思議なシンクロと、引き寄せ・・
公演が近づいてきたある日、日本の「急な坂スタジオ」からメルマガが来ました。メルマガのタイトルに「日本人ダンサーがシドニーで公演!」みたいなことが書いてあり、「え、ええええええええっーーーーーーー?!!」と、腰が抜けるほど驚きました。
メルマガを読んでみると、この作品のダンサー・振り付けの男性と、脚本・演出の男性は、急な坂スタジオでサポータースタッフとして活動されているとか!しかも「フェスティバル/トーキョー」でも公演したことがあるとか!!(←「ゲゲゲーーーー!また引き寄せてしまった!」と、顎が外れそうになる私)
http://kyunasaka.jp/sydney
http://kyunasaka.jp/kitaocolumn
急な坂スタジオや、フェスティバル/トーキョーと言えば、私が独身時代に日本でお世話になった場所・・。
急な坂スタジオやフェスティバル/トーキョーを知ったいきさつ
私がまだ独身時代、東京で、Post Theatreというパフォーマンスグループのワークショップを受けました。Post Theatreは、ドイツ男性のMax Schumacherと、日本人女性Yokoさんがコンビで活動しています。私の大好きなパフォーマンスグループの一つです!
http://www.posttheater.com
このPost Theatreのワークショップは、ドイツにいるお二人と、東京のオフィスに集まった日本人のワークショップ参加者を、スカイプで結んで行われました。
Maxは日本語が話せなかったので、ワークショップは英語で進められました。英語が分からない参加者のために、東京のオフィスには通訳者の方もあらかじめ手配されていました。演劇やパフォーマンスに理解があり、通訳も出来る人を日本で探すのは簡単ではありません。また、ドイツ人男性が話す英語を、スカイプを通して理解するのも簡単なことではありません(当時のスカイプは音質もまだ結構悪かったので)。通訳者の方は一生懸命頑張ってくれてましたが、とても大変そうでした。なるべく出しゃばらないようにと思いながらも、彼女が苦しそうな時は、通訳の助け舟を出してお手伝いさせてもらいました。
実は、そのことがきっかけで、この通訳者さんを通して、トーキョー/フェスティバルのプロデューサー「そうまちあき」さんを紹介されました。
そうまさんは、国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」初代プログラム・ディレクター (F/T09春〜F/T13)、横浜の舞台芸術創造拠点「急な坂スタジオ」初代ディレクター(2006-10年)です。
当時の私にとって、そうまさんは、いつもニコニコとフレンドリーで、でも締めるとこはキチッと締めるって感じの印象でした。
そうまさんのおかげで、急な坂スタジオや、西巣鴨創造舎という素晴らしい舞台に、なんども足を運ぶ機会をもらいました。海外から舞台アーティストや演出家が来日した時に、舞台通訳として、日本語の観客と、英語の舞台アーティストのかけ橋のお役目をさせてもらいました。
フェスティバル/トーキョーに出演することになったいきさつ
そんなある日、そうまさんから、ある舞台オーディションに出てみないかと声をかけられました:
今度、英語の舞台「Dead Cat Bounce」の上演を予定してるの。通常なら、外国人が公演する時は、事前に日本語字幕を用意して、公演中に見せるんだけど。
今回の舞台は、演じてる最中に、実際に株式市場から株を買ったり、電話をかけて株の銘柄について問い合わせする場面があってね。株価や電話をかける会社は、その日の舞台によって異なるから、事前に字幕を用意できないの。
演出家は、舞台上で通訳できる日本人をキャスティングしたいと。でも「いわゆる通訳者」って感じの、真面目に舞台で立ってやる通訳はダメでね。
通訳も出来るけど、俳優の一人として舞台上で動き回り、他の外国人俳優との絡みもできる人を探してる。
舞台上で役者も通訳も同時に出来る人じゃなきゃダメなの。
まじ!!?
・・・つうか、内心、めっちゃビビりました。
「そんな大役、私に出来るのか? 株のこと全然興味もないし。第一、何も知らんし・・」と。
でも、オーディション受けるぐらいタダだしと思い、とりあえず駄目元で挑戦してみることにしました。だって、「この子には、絶対無理だわ!」と思うなら、演出家もわざわざ選ばないだろうしと思ってね。私が決めなくても、「全ては演出家にお任せしたらいいわー」と思って。
●舞台「Dead Cat Bounce」に出演した時の話:
The Unknown Dancer in the Neighbourhoodの劇場
さて、今回のダンサーに話を戻すと・・・。今回のシドニーの公演は、Eternity Playhouseという、古い教会をリノベーションした素敵な劇場での公演でした。
元教会だけあって、独特のインテリアデザイン。天井は高く、細かな装飾が施されてました。正面には、祭壇(←っていうのかな?)のような、丸く奥へ引っ込んだ空間がありました。窓にはカラフルなステンドグラスがはめ込まれてました。(日本では、こういう空間では、なかなか演じられないんじゃないかなぁ・・)
この元教会という独特の空間が、この日本から持ってきたパフォーマンスに上手に組み込まれていて、本当に素晴らしかった。ただ単に、「日本で創作し、演じたパフォーマンス」を、この「オーストラリアの元教会」という箱の中で、全く同じように繰り返すのではなく・・・。「現地の空間」に合わせて、作品を溶け合わせていく、Site specificな作品になっていた。
劇場の横には、窓がずらりと並んでいてね。カラフルなステンドグラスが埋め込んであるその窓は、公演が始まった時は黒いロールカーテンで覆われていたので見えませんでした。
でも、終盤で、音楽が大音量でクレイジーに鳴り響き、その中でダンサーが狂ったように踊りまくり、観客席横の階段を駆け上がる時に、黒いロールカーテンが上に上がり、このカラフルなステンドグラスが露出しました。最高のタイミングで、このステンドグラスを登場させるという素晴らしい演出!まさに、Site specificな演出!このシドニーの、この劇場だったから出来た演出!
(↑日本の公演では、ステンドグラスは無かったと思うし、このシーンはどうやったのか、気になります・・知ってる人がいたら教えてー!)
私は、この舞台の翌日に行われた、ワークショップにも参加したんだけど・・。脚本・演出を担当したSuguru Yamamotoさんが、「僕は、劇場の空間にあるものは有効活用したいと思ってる。せっかく、そこに備え付けのものがあるのに、使わないのは、もったいないと思うので」と話していました。(なるほど、納得!)
演出家やダンサーが日本にいる間は、この劇場の詳しい設備や内装までは分からなかったはず。シドニー入りしてからの短時間に、こういうSite specificな演出を大慌てで考えたんだろうなぁ・・・。すごいなぁ・・。
The Unknown Dancer in the Neighbourhoodの感想
会場に着いた時、受付で「席は自由に選べる」と言われました。「じゃ、一番前で!」とお願いしました。すると、真ん中から少し右寄りの最前列の席をもらえました。
舞台が始まる前に、友人あゆみさんとの話に夢中になってた私。すると、何の前触れもなしで、いきなり舞台後方のドアが開き、ダンサーが舞台上を全速力で走って突撃の登場!ちょうど私とあゆみさんが座っていた、すぐ目の前まで来てね。あまりに近くて「ヒイイイイイイイィイ!!」とドキドキしました。振動、迫力、そしてダンサーのエネルギーが、体に、じかに伝わってきましたー。(こんなのYouTubeの動画じゃ絶対に感じられない)
ダンサーが床にバタンと倒れるシーンでは、座ってる観客にも伝わってくる「ドシン!」という振動。後ろにいたお客さんが、思わず「痛い!」と叫んでた。私もそう思った。
深刻なテーマもありながら、でもおかしくて大笑いしちゃう場面もたくさん。私は「電車オタクの駅員さん」や、「笑う時につい『フガッ!』って息を吸い込んで、豚の鳴き声みたいな音を出す女性」が、めっちゃツボにはまり、大爆笑。
↑恥ずかしながら、私も旦那ラッセルと話してる時、あんまりおかしいと、つい「フガッ!」って豚の鳴き声みたいな音だしちゃう時があってね。すると、ラッセルが、いつもそれを真似して、「フガッ!」って、何度も何度もやってバカにするの。(思い出したら、なんかプチムカついて来た!)
今は、FacebookやYouTubeなどの普及で、バスや電車の中で、誰でも無料でお手軽に動画を再生できるでしょう?でも、録画したパフォーマンスは、たとえ、大きなスクリーンで映画のように上映しても、毎回同じにしか見えない。ライブパフォーマンスは、やっぱり生で観ないとなぁ・・・と改めて感じた舞台でした。
他にも素晴らしいと思ったことは沢山あったけど、言葉にすると陳腐に聞こえそうで、言葉にしきれない!内容はもう、言葉じゃ表しきれない程、「本当に素晴らしい、素晴らしい、素晴らしいーーー!!」の一言でした。
私、観てる最中に、2度も号泣、号泣。
なんか、私自身の「神様みたいな存在」からの応援メッセージをもらってしまったように感じた場面もあって。何というか、「ありのままでいいんだよ。人生、楽しい経験も、嬉しい経験も、素敵な経験も、辛い経験も、怒りたくなるような経験も、不安でたまらない経験も、悲しい経験も、全てオッケー!!全部、体験して観なはれー!人生、良いことばかりじゃなくても、ポジティブシンキングじゃなくても、全部オッケーなんよー!一生懸命、色んなことを体験しなはれー」と背中を押してもらったような気分になった。
あと、舞台の最後の方で、ダンサーが激しく狂ったように踊るシーンがあり、同時にものすごい大音量で流れた音楽が素敵でした。フランス人男性歌手Charles Trénetの曲、「LA MER」でした。この曲です:
舞台を、観終わった後で・・
観終わった後は、なんか放心状態。すっごい過激なジェットコースターを乗り終えて、終点地点に辿り着いたような感じ。妙に体が痺れて、しばらく動けなかった。圧倒的な感動で、口から言葉が出てこなかったし。何だか、ハートを鷲掴みにされちゃったというか・・・。なんか心臓を持っていかれちゃったような、不思議な感覚でした。
友人のあゆみさんや、会場で偶然ばったり再会した、あやこさんとも、「すごかったよねー!!!キャーーー!!」と、黄色い悲鳴をあげて、めちゃめちゃ盛り上がりました。
会場でUsherをしてたオージー女性とも、「すごいよねー!!ウワーーー!!」と感動を分かち合いました。彼女曰く、「私は今夜で3回目!私はさ、日本語が分からないから、字幕を追わないといけないのね。でも、3回見れて本当にラッキーだった。回を重ねるごとに、字幕を読まなくても内容がすでに分かる部分もあったので、作品の理解がどんどん深まっていった感じ。毎回観るたびに、新しい発見があって、今日はやっと、あの杖をついてたおじいさんが、元ダンサーだった人なんだと、頭の中で繋がった!」と興奮してました。
Wataru Kitaoさんのダンス、表現力、しなやかさ、力強さもすごかった!汗だくになってた。私の友人2人も、「ファンになっちゃったー!!」と、熱っぽく語っていました。
Suguru Yamamotoさんの脚本・演出も、本当にたまらない良さ!
本当に、本当に、素晴らしい舞台作品でした。観れて良かった!本当にラッキーでした!!またオーストラリアに来て欲しい!!
シドニー公演を終えて・・・。急な坂スタジオからのメルマガ内容を抜粋
3月22日、23日にシドニーで上演された、この作品「となり街の知らない踊り子」のレビューです:http://kyunasaka.jp/sydney
シドニーで公演を終えたダンサー北尾亘さんの特別インタビュー。海外公演で感じたことや、今後の活動について、彼らしい、素直な言葉で答えていらっしゃいます:http://kyunasaka.jp/kitaocolumn
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