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手織りで使う糸の比較:シルク, リネン, ウール, コットン, 合成繊維の特徴, 天然繊維と合成繊維の違い, Fibres for weaving: difference among silk, linen, wool, cotton, synthetics?

手織りの道具

◎オーストラリアのメルボルンで、虹織り(虹色の手織り)アート作品を創造してる陽子です。

◎Rainbow Weaving Art | Melbourne | Award-winning textile artist

▼ Creation Process/虹織りアート創作▼

メルボルンで手織りを始めました。

私は天然素材の糸が好きです。

よく使う糸は、シルク、リネン、コットン、ウールなど。

それぞれの糸の特徴について調べてみました。

(1)動物性の繊維 (Animal fibres)

Jacob wool

・羊毛の一種。

・Dual-purpose用(食肉用・羊毛用の両方に使われる)。

Blue-faced leicester wool

・羊毛の一種。

・Dual-purpose用(食肉用・羊毛用の両方に使われる)。

・中〜長の毛。

・非常に柔らかい。

・ほとんど白色だが、ナチュラルカラー(黒、茶、シルバー、ミックス)のものもある。

Wensleydale wool

・一番大きくて重い羊の一種から取れる羊毛。

・長くて光沢のある巻き毛の羊毛。

・柔らかいが、耐摩耗性があり長持ちする。

Mohair(モヘア)

・アンゴラゴートというヤギの毛。

・巻き毛。

・柔らかく、光沢があり、とても暖かい。

Camel(ラクダ)

・フタコブラクダのアンダーコート(長い毛の下の短い下毛)。

・非常に細かくて柔らかい。

Alpaca(アルパカ)

・「Huacaya」と「Suri alpacas」というラマ科の一種の毛。

・細かく、光沢があり、暖かい。撥水性。

Angora(アンゴラ)

・アンゴラウサギの毛。

・アンゴラゴート(ヤギ)の毛はモヘアと呼ばれ、区別される。

・非常に柔らかく、ふわふわしてる。

・短めの毛。

Cashmere(カシミヤ)

・カシミヤゴート(ヤギ)のアンダーコート(長い毛の下の短い下毛)。

・非常に細かく、柔らかく、暖かい。

・ナチュラルカラー(黒、茶、シルバー、ミックス)のものもある。

Silk(シルク)

・蚕(かいこ)の繭(まゆ)から取れる。

・「Mulberry Bombyx mori」と「Wild tussah silk」の2種類ある。

・非常に細かく、柔らかく、強く(濡らすと少し弱くなる)、光沢がある。繭から取れる絹の繊維の長さは300〜900mになる。

Horsehair(馬の毛)

・馬のたてがみや尻尾から取れる。

・強く、硬く、丈夫な繊維。

(2)植物性の繊維(Plant fibres)

Cotton(コットン)

・綿花から取れる。

・短い繊維。

・涼しく、通気性がある細い繊維。

Linen(リネン)

・Flax(亜麻)の中心部の茎から取れる。

・強く(特に水に濡れると)、スムーズで、光沢はあまりなく、シワになりやすい繊維。

Ramie(ラミー)

・China Grassから取れる。

・パリパリした触感、強く(濡れても乾いた状態でも)、光沢があり、伸縮性は低い。

・コットンより染まりにくい。

Jute(ジュート)

・Corchorusという植物の茎と外側の皮から取れる。

・長く、強く、硬い繊維。

・手織りのマットやバスケットに使われる。

Abaca

・Abacaというバナナ科の植物の葉から取れる。

・強く、耐摩耗性があり長持ちする。

・ロープや手織りのマット、バスケットに使われる。

(3)合成繊維(Synthetic fibres)

Bamboo(竹) ・レーヨン

・竹のビスコース(Viscose)繊維*から作られる。

・ほとんどが中国産で、農薬を使わず育てられるオーガニック製。

・抗菌、吸水性が高い、抗アレルギー、柔らかい。

・高い光沢性があり、ドレープが出る。

Tencel(テンセル)

・漂白した木のパルプから、ビスコース*製造工程を経て作られる。

・柔らかく、高い光沢がありドレープが出る繊維。

・シワになりにくく、強い。

◎テンセルの製造方法について、こんな記事も見つけました:

テンセルも再生セルロース繊維ですが、クローズドループシステムという無害の溶剤を使った方法で製造されています。

テンセルの原料はユーカリの樹林農場で収穫された木材パルプで、パルプは森林管理協議会(FSC)の認証済みです。

竹やその他のセルロース原料を使うことも可能ですが、ユーカリからは無駄を最小限に抑えながら最高品質の繊維を産出することができます。

出典:https://www.patagonia.jp/blog/2012/02/claim-it-there-is-no-green-wetsuit/

Soy fibre(大豆繊維)

・豆腐を作る工程で出る大豆の皮から作られる。

・高い光沢とドレープが出る。

・コットンと同じぐらい吸水性が高いが、通気性はコットンより高い。

Ingeo

・石油化学製品を使わずに、トウモロコシのポリ乳酸*を使って作られる。

・高い吸水性、通気性がある。

・ドレープが出る。柔らかく、暖かい。

ポリ乳酸は環境中の水分により加水分解を受け低分子化され、微生物などにより最終的には二酸化炭素と水にまで分解される。こうした性質を持つ生分解性プラスチックの中でも、ポリ乳酸は最も研究・実用化が進んでいる高分子である。

土中や水中では数年は安定だが、堆肥の中では、約1週間で分解される。農業用に、マルチシートやハウス用のフィルムとして、ホビー分野では屋外用BB弾(通称バイオ弾)として実用化されているほか、繊維製品、光ディスク、包装用フィルム、レジ袋などに応用研究・試験が進んでいる。

ただし、誤解してはならないのはポリ乳酸が通常の環境で直ちに生分解を始めるわけではない。上述のように堆肥の中等の特に微生物が豊富な環境でなければ、一般の合成樹脂と同様にほぼ安定である。

ポリ乳酸の製品は徐々に増えつつあるが、「廃棄時」においてポリ乳酸の特性を生かした処理法(堆肥の中に入れて生分解させる)がなされている例はほとんどなく、一般の合成樹脂同様に焼却処理されるのが通例。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリ乳酸

ポリ乳酸を合成するためにはある程度のエネルギーを必要とし、そのエネルギーは石油など化石燃料由来であることも多い。

このためポリ乳酸を真の意味でカーボンニュートラルと呼んでよいかは若干の議論があり、カーボンニュートラルを考慮してもポリスチレンに比べて排出される二酸化炭素が多いとの見方も存在する

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリ乳酸

Milk protein(牛乳繊維)

・牛乳のプロテインから作られる。

・製造工程は大豆繊維とほぼ同じ。

・柔らかい。高い光沢性があり、ドレープが出る。

・吸水性高い。

*ビスコース(Viscose)繊維、ビスコース(Viscose)製造工程とは?

竹とテンセル繊維は、「環境に優しい繊維」というイメージがありますが、本当にそうなのか調べてみました。

詳しくはウィキペディアhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ビスコースでも読めますが、大事なところを抜粋すると・・・

ビスコースって何?

以前は、「ビスコースって柔らかい繊維っぽいけど、一体なんだろう?」って思ってた私です。

調べてみたら、「竹などをレーヨンに製造する過程」のことを「ビスコース」と呼ぶようです。

婦人服売り場では、レーヨンは「値段の安い絹」みたいな感じで扱われている気がします。光沢があり、ドレープが綺麗に出るし、手触りも絹みたいだし。だけど、絹製品より値段がずっと安いです。

あの硬い竹が、しなやかな絹のような肌触りのレーヨンになるのだから不思議ですよね?

ビスコースという製造過程を経て出来上がった製品は地球環境に優しいの?

化学的には天然のセルロースと同じものであり、土中、水中で微生物により分解され環境負荷の少ないものとして評価されている。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ビスコース

ビスコースの製造工程を経て出来上がった製品は、「土中、水中で微生物によって分解されるし環境負荷が少ないもの」だと言われます。

確かに、レーヨンは「農薬を使わなくても育つ竹(だからほとんどの竹はオーガニック製)」だし、テンセルも「木のパルプ」から作られるので、土中・水中で微生物に分解されて環境負荷は少ないでしょう。

でも、その製造工程で使われる数々の化学物質が、環境にとって有害だと聞いたことがあります。

詳しくはPatagoniaのウエブサイトで読めます。大事なところを引用すると:

レーヨンの製造方法は1つだけではありませんが、最も一般的で竹の加工に幅広く利用されているのがビスコース法です。

この方法では竹などのセルロース原料を強力な溶剤に溶かして濃厚な粘性溶液を作り、それを紡糸口金に通してから急冷剤に入れることにより糸を凝固させて、繊維にします。この過程では繊維が化学溶液のなかで「紡がれる」ため、加水分解アルカリ化または溶液紡糸と呼ばれます。

溶剤として使われる二硫化炭素は、生殖器系に障害をおよぼすことが知られている有毒化学物質で、工場で働く人びとを危険にさらし、また大気放出や廃水を介して環境を汚染する可能性があります。

ほとんどのビスコース工場における二硫化炭素の回収率はおよそ50%で、つまり約半分は環境中に流出していることになります。

ビスコース法ではこの他に水酸化ナトリウムや硫酸など、潜在的に危険な化学薬品が使用されます

出典:https://www.patagonia.jp/blog/2012/02/claim-it-there-is-no-green-wetsuit/

つまり・・・

まとめると、レーヨン、つまり竹の加工品を製造する方法(ビスコース法)は有毒化学物質を使うため、工場で働く人に危険があったり、環境を汚染する可能性があるのですね。

ツヤツヤで光沢があり絹みたいな肌触りで、しかも安いレーヨンですが、私は環境汚染の可能性がある素材を使いたくないです。

安くて便利という、表面上のメリットだけを見て消費者が利用することで、それを販売する企業が儲かり、もっと多くのレーヨンが製造されるからです。

一時的には企業に金銭的なメリットがあっても、長期的に見たら誰にとってもメリットがありません。環境汚染が進めば地球に住む私たちみんな(植物・動物・人間)が危険にさらされ、誰にとっても良くないことですから・・・。

だとしたら、手織りをする私たちも、「環境汚染の可能性がある糸」は使わないに限ります。

関連書籍

この記事の中で、それぞれの繊維についての解説は、下の英語の本(24〜27ページ)の情報を元に和訳させてもらいました。手織り用の毛糸の紡ぎ方の本ですが、いろんな繊維の特徴について詳しく書かれています:

追記記事:ポリエステル、メリノウール、ナイロンの違いについて

ポリエステル、メリノウール、ナイロンの違いについて解説されてる別の本も見つけました。

この本は、アメリカのコロラド州に住む男性冒険家「Andrew Skurka」さんが書いた本です。彼自身の長距離ハイキングの経験を通して得た、ハイキングに必須な道具、ツール、洋服の知識を惜しみなく書いてます。

本の中で「長距離のハイキングの際に必須の肌着(長袖のシャツ・下着のパンツなど、アウトドアウェアの中でも肌に直接触れるベースレイヤー)」の素材について書かれてる箇所が興味深かったです。

ちなみにアウトドアに特化した日本語のブログにも、こんな解説がありました:

(ベースレイヤーとは)皮膚に触れる、皮膚に最も近い位置にある層。つまり最も多くの汗が集まることを意味します。

ベースレイヤーの役割は、その汗や湿気を即座に、効率的に外へ逃がし、体表面をドライに保つことで、体温を維持すること。

この結果暑いときにはクールに、寒いときには暖かくいることができる。

素材としては綿のように水分を保持しがちな生地は適さず、逆に水分をまったく貯めない化学繊維が多く使われる

出典:https://outdoorgearzine.com/column-how-to-choose-the-best-baselayer

それでは、男性冒険家「Andrew Skurka」さんの本を抜粋しますね。(本の出版年が2012年で古いし、アメリカと日本で開発された商品の品質の違いもありますが、参考にはなると思います)

以下、青字部分は、私の和訳です:

ポリエステル

・Source: Oil(原材料:石油)

・Moisture management performance: Excellent. Fibers do not absorb water. Fabric wicks well, dries fast, and is very breathable. (吸汗性:優れている。ポリエステルは汗を吸わない。早く乾く。通気性も高い)

・Odor resistance: Awful.(匂い:臭い)

・Cold-and-wet performance: Worst. Significant conductive heat loss when wet. (保温性:最悪。特に濡れると体を冷やす)

・Cost: Least expensive.(コスト:一番安い)

・Durability: Good.(丈夫さ:良い)

Merino Wool(メリノウール)

・Source: Sheep(羊)

・Moisture management performance: Good. Fibers absorb more water than poly. But this fabric feels less clammy when wet and is also very breathable. (吸汗性:まあまあ。ポリエステルよりも汗を吸う。汗をかいても湿ってネバネバする感じは少ないし、優れた通気性もある)

Odor resistance: Excellent.(臭さ:優れている)

Cold-and-wet performance: Best. Fibers absorb some water, so moisture is not in direct contact with skin. (保温性:最高。繊維は汗を幾分吸うので、肌に汗が直接触れることはない)

Cost: Most expensive.(コスト:一番高い)

Durability: Fair. (丈夫さ:まあまあ)

Nylon(ナイロン)

Source: Oil.(石油)

Moisture management performance: Does not wick or dry as well as poly but better than merino wool. Tightly woven fabric breathes poorly.(吸汗性:ポリエステルのように乾かないが、メリノウールよりは良い。きつめに織ってある繊維は通気性が低い)

Odor resistance: Fair.(臭さ:まあまあ)

Cold-and-wet performance: Similar to polyester.(保温性:ポリエステルと同じぐらい)

Cost: Moderate.(コスト:まあまあ)

Durability: Best.(丈夫さ:一番丈夫)

ベースレイヤーの主な役割は、「吸汗」、「排出・発散」、「調温(保温)」だそう。つまり吸水性、通気性、保温性の高い素材が好まれるのですね。きっと体温を一定に保つために必要なのですね。

アウトドアに特化した日本語のブログでも、化学繊維とメリノウールの違いに詳しくて参考になります:

関連書籍

参考にした本です。男性冒険家「Andrew Skurka」さんが書いてます:

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